- モクモク煙ばっかりで迷惑なんじゃないかと焦る
- なかなか火がつかなくて時間ばかりかかる
- せっかく薪ストーブ買ったのにうまく使えない
どんな高性能の薪ストーブでもうまく火をつけることができないと大量の煙がでます。大量の煙がでている状態だと、暖まることもできないし料理にかかる時間も大幅に増えてしまい、純粋に薪ストーブを楽しめません。
ぼくは小学生の時からキャンプをはじめて30年以上。今ではマッチ1本で着火可能です。
今回この記事では、初心者でもカンタンにできる火のつけ方から火を安定させるコツまで徹底的に解説していきます。
この記事を読めば最小限の労力で火をつけることができるので、薪ストーブを最大限に楽しめるようになります。
結論は、基本の5つのポイントを押さえれば、誰でもカンタンに火を扱えます。
薪ストーブで煙がでる原因は?
煙が発生する原因は不完全燃焼です。
薪ストーブでも焚き火でも、火がくすぶっている時に煙が多く発生します。要は、火種はあるのに着火しない状態「不完全燃焼」を起こしているから。
薪は熱せられると、炭素や水素を含む可燃性ガスを放出します。
この可燃性ガスに引火することで薪が燃えるのですが、炉内の温度が低かったり、空気の供給が不十分だと不完全燃焼を起こし、燃えやすい水素だけが燃え炭素が残ることになります。
この残った炭素が煙の正体です。
炭素を燃やしきる3つの条件
煙の正体は燃え残った炭素でしたね。
それなら炭素を燃やしきれば(不完全燃焼を解消してやれば)煙は出ないことになります。現に順調に燃えている薪ストーブでは煙の発生は見られません。
炭素を燃やすためにはつぎの3つの条件が必要です。
- 適切な燃料
- 十分な空気
- 高温の維持
この3つの条件を揃えてあげることで、煙を出さずに薪を燃やすことも安定した状態を保つこともカンタンになります。
ただ、煙を出さないと言っても、着火時には少なからず煙が発生します。着火時に発生する煙をいかに少なくするか、いかに短時間に抑えるかが火を扱う上で重要なポイントになってきます。
つぎの章から炭素を燃やす3つの条件を踏まえながら、煙の出ない火のつけ方を解説していきます。
煙が出ない薪ストーブの火のつけ方【5つのポイント】
煙が出ない火のつけ方のポイントはつぎの5つ。
- 乾いた薪を使う
- 焚き付けには極細の薪を使う
- 順番に薪の太さを変える
- ガストーチで燃焼の補助をする
- 火が安定するまで投入口は全開
具体的な手順についてはつぎの章「薪ストーブの火のつけ方の具体的な手順」で解説していきます。まずは基本のポイント5つを押さえていきましょう。
それでは深掘りして解説していきます。
乾いた薪を使う
「少しぐらい湿ってても大丈夫でしょ?」と思うかもしれませんが、乾燥していない薪はくすぶってばかりで火がつきません。
なぜなら可燃性ガスが発生する温度に達しないから。
たとえば、風船に水を入れた状態だと下からライターの火を近づけても割れません。水がある限り風船の温度が上がらないからです。
表面が濡れている程度ならまだ大丈夫ですが、内部に水分が残っている薪は燃えません。それに濡れた薪を投入すると蒸発した水蒸気で炉内の温度を下げてしまう原因にもなり、ますます煙が出る条件になります。
薪は乾燥するまでに1~2年ほどかかります。
なので、薪を買う場合はちゃんと乾燥させてある薪を選ぶことが大切です。また、保管する場合もなるべく濡れない場所にしましょう。
焚き付けには極細の薪を使う
薪などの主となる燃料に火をつけるために用いる燃えやすい物。また、火をつけて燃やしはじめること。
よく乾燥した薪を買ってきても、いきなり直径5~7cmの薪に火をつけることはできません。
割りばしほどの太さの薪から火をつけていきましょう。細い薪のほうが勢いよく燃えるので炉内の温度をすばやく上昇させることができます。
極細の薪を作るのにはナタがあると便利です。
市販の薪を半分、また半分と割っていき、割りばしほどの太さにします。長さは10~15cmほどでOKです。
束にして一握りほどあれば十分です。
Amazonなどで、よく乾燥したスギやヒノキの「焚き付け用の薪」が売ってあります。でも直径1~2cmぐらいあるので、ナタで割ってから使うようにしてください。
順番に薪の太さを変える
焚き付け用の極細の薪を準備しましたが、これでも直径5~7cmの太薪に火をつけることはできません。
火を育てていくイメージで、極細薪(5mm)⇒細薪(1~2cm)⇒中薪(2~3cm)⇒太薪(5~7cm) と順番にくべていきましょう。
「時間がかかるんじゃないの?」「めんどくさくない?」と思われるかもしれませんが、太薪まで到達するのに10分もかかりません。それに、中薪を投入するころには煙は出なくなっています。
この方法がもっとも確実でいちばん最短のルートです。
うまく育てていくコツは焦らないこと。
焦って薪を詰め込み過ぎてしまうと空気の通り道がなくなり、うまく燃焼しません。炉内に入っている薪全体に火が回ってからつぎの薪を入れましょう。
ただ、最初の極細薪の燃焼時間は短いので、火を入れる前に細薪を5本ほど上に載せておきます。
ガストーチで燃焼の補助をする
ガストーチを使って燃焼の手助けをしてやると煙が少なくなり、途中で消えてしまう失敗がなくなります。
慣れないうちは薪を投入するタイミングが掴めず火が消えてしまったり、キャンプとかの場合、どうしても湿った薪しかない場合があります。
そんな時はガストーチを活用しましょう。
ガストーチを使うことで、強制的に炉内の温度を上げることもできるし、ガスの高火力で煙の元になる炭素を燃焼させることができます。
ここで使うガストーチは、高火力でノズルが長いものが便利です。
ぼくはキャンプ用ではなく、下の業務用ガストーチを使っています。炭の火起こしも楽にできます。
火が安定するまで投入口は全開
薪を燃焼させるには空気が必要です。
よくある失敗が火をつけてすぐに扉を閉めてしまうこと。
焚き付けの段階では炉内の温度が上がってないので煙突を抜ける上昇気流が発生していません。なので、強制給気が始まっていない状態。
この段階で薪の投入口を閉めてしまうと、十分な給気ができずに不完全燃焼になります。
火をつけた瞬間から徐々に上昇気流が発生します。だから煙は煙突のほうに抜けていくので煙が逆流してくることはありません。
慌てて扉を閉めなくても大丈夫です。火が安定するまで薪の投入口と空気口は全開にしておきましょう。
もし煙が逆流する場合は、ほかの理由があります。煙の逆流を抑える方法については「薪ストーブの燃焼を安定させるコツ」の章で解説しますので、このまま読み進めてください。
投入口を閉めるタイミングは、薪が「ゴーッ」と言って燃えだした頃です。
太薪を投入する頃になると上昇気流によって排気が強くなります。排気が強くなると、投入口や給気口から勢いよく空気が吸い込まれていくので「ゴーッ」と吸込み音が聞こえるようになります。
薪ストーブの火のつけ方の具体的な手順
ここでは実際の手順を写真付きでくわしく解説していきます。
- 焚き付け用の薪を準備する
- 新聞紙を丸めて敷く
- 極細薪と細薪を新聞紙の上に載せる
- ガストーチで着火する
- 細薪を追加し中薪を投入する
- 中薪に火が回ったら太薪を投入する
- 火が安定したら投入口を閉める
今までの解説と重複する部分もありますが、おさらいのためそのまま読み進めてください。
焚き付け用の薪を準備する
薪ストーブを上手に使うためには、焚き付け用の薪の準備が必要不可欠です。
この準備を怠るとうまく火をつけることができず、余計に手間と時間がかかってしまいます。
焚き付け用の薪は
- 極細薪(直径0.5cm)
- 細薪(直径1~2cm)
- 中薪(直径2~3cm)
を目安に準備します。
ナタとオノを使って太薪を半分、また半分と割っていけばOKです。
めんどうなら、Amazonとかに売っている「焚き付け用の薪」を買って割る方法もあります。建設現場や材木店などから廃材をもらってくる方法もあります。
土木や建築で使う材木は杉やヒノキなどの針葉樹が多く、割りやすく燃えやすいので焚き付けにオススメです。
新聞紙を丸めて敷く
薪ストーブの扉を開けてグシャッと丸めた新聞紙をクッションのように敷きます。
縦長の薪ストーブなら前方寄り(投入口寄り)に敷きましょう。
なぜなら、前方寄りなら火がつけやすいし薪の投入がしやすいからです。それに、火は奥側(煙突側)に流れていくので、前方寄りで焚き付けすれば全体に火が広がりやすくなります。
ちなみに、横長の薪ストーブなら真ん中辺りでOKです。
新聞紙は全体に敷く必要はありません。薪ストーブの底面積の1/3~1/2程度で大丈夫です。
焚き付け用の極細薪を上に置くだけなので。
着火剤を使わない理由は、着火剤だと「1点」にしか火がつかないからです。
よく見るのは、着火剤に火をつけて上に小枝を重ねていき、少しずつ火を大きくする光景です。煙ありきの焚き火ならありですが、薪ストーブはいかに早く高温にして煙を短時間に抑えるかが大切です。
なので、全体に素早く燃え広がる新聞紙のほうが都合がいいのです。
新聞紙がないときに代用できるものは
- 松や杉の葉やヒノキの葉
- 松ぼっくり
針葉樹の枝や葉は油分を多く含んでいるので焚き付けに使えます。枯れて落ちて乾燥している枝葉を拾ってきましょう。
ただ、よく燃える代わりに煙が出ますし、灰が飛びます。
極細薪と細薪を新聞紙の上に載せる
新聞紙の上に極細薪をバサッと置きます。
極細薪は雑な感じに置いても大丈夫です。
つぎに極細薪の上に細薪を5本程度載せます。
これで火付けの準備は完了です。
ガストーチで着火する
ここまで準備ができていればマッチ1本で着火できますが、今回のテーマは「煙をいかに少なく、いかに短時間に抑えるか」なのでガストーチを使います。
ここで使うガストーチは、高火力でノズルが長いものが便利です。
ぼくはキャンプ用ではなく、下の業務用ガストーチを使っています。通常のガストーチは1,000℃前後。この業務用ガストーチは約2,000℃のパワフル仕様です。
ガストーチを使う理由は、着火だけではありません。
初期燃焼時から一気に高温状態にして、煙の元である炭素を燃焼させるためです。
なので、多少煙が出ても大丈夫な場合は必要ありませんが、ガストーチがあると薪ストーブの着火はもちろん、炭の火起こしも格段に楽になります。
それに、あるのとないのとでは安心感が違います。
話がズレましたが、ガストーチで新聞紙に火をつけた後、極細薪・細薪全体に火が回るまで炙り続けましょう。
細薪を追加し中薪を投入する
最初に入れてあった極細薪・細薪の全体に火が回ったらガストーチを消し、細薪を5本ほど追加します。
そして細薪の上に中薪3~4本をくべます。
このときのポイントは、燃えている火を崩さないこと。
なぜなら、燃えている最中の薪を動かしたりすると火が弱まってしまうからです。
下の写真、雲と重なって見えにくいですが、この段階で煙はほんの少しの状態です。
中薪に火が回ったら太薪を投入する
中薪に火が回ったら太薪を3本ほどくべます。
このときも先ほどと同じように、燃えている火を崩さないようにしましょう。
太薪はなるべく立体的に重なるようにくべていきます。
火が安定したら投入口を閉める
太薪に火が回り、底に真っ赤な熾火が見られるようになれば安定した状態です。
一度投入口を閉めてみて、空気口がら勢いよく空気が吸い込まれていることが確認できればOKです。
火をつけてからここまでちょうど10分でした。
煙もほぼわからない状態です。
薪ストーブの燃焼を安定させるコツ
先ほどまで解説した「火のつけ方のポイント」と「具体的な手順」のとおりにしてもらえば、火をつけることはカンタンにできます。
ですが「着火はうまくいったけど、途中で火が消えてしまってうまく燃えない!」なんてこともあるかと思います。
料理の途中で火が消えてしまったり、火力が上がらない状態だと料理も楽しくないしイライラしますよね。
ここでは薪ストーブを安定して燃やし続ける5つのコツを解説します。
- 煙突を高くする
- 煙突トップを付ける
- 薪は常に2本以上ある状態にする
- 薪同士を密着させない
- 細薪・中薪を途中にも投入する
それでは深掘りして解説していきます。
煙突を高くする
薪ストーブの煙突は高ければ高いほど燃焼に有利です。
なぜなら、煙突が高いほどドラフト(上昇気流)が強く発生するから。
この上昇気流によって煙突からの排気が強くなり炉内に空気を取り込むことができるので、煙突が高いほど安定して薪を燃焼させることができます。
また、煙突を高くすることで煙の逆流を防ぐことができたり、煙突から出る火の粉からテントを守ることができます。
理想の煙突の高さは3m以上です。
アウトドア用薪ストーブに付属している煙突の長さは、だいたい2m前後。付属の煙突を使って火が安定しないと感じる場合には、もう1m足してみてください。
1m足すだけでも空気の吸込みの違いが実感できるはずです。
ただ、テント内で薪ストーブを使うとき、煙突をテント内から外に出すために横引き(水平に設置)しますよね。煙突の横引きがあると上昇気流が弱くなります。
煙突の横引きの長さと高さの比率には決まりがあります。
横引き 1 : 高さ 2
たとえば、横引きが1mなら高さは2m以上、横引きが2mなら高さは4m以上必要です。
煙突トップを付ける
煙突トップには次の3つの効果があります。
- 煙の逆流を防ぐ
- 火の粉を抑える
- 鳥・虫の侵入を防ぐ
アウトドアで使う薪ストーブの煙突トップは笠があったりするものの、形状はストレートです。
煙突先端がそのままだと雨の浸入はもちろん、風によって排気が押し戻される「逆流」が発生します。排気が逆流すると薪の投入口や空気口から煙が出てくるだけじゃなく、炉内に煙が充満して火が消えてしまいます。
こうなると辺り一面煙だらけ。
なので、煙突を高くすることに加え、煙突トップの取り付けがオススメです。
煙突トップには主に次の種類があります。
煙突トップの種類 | L 型 | T 型 | H 型 | P 型 |
---|---|---|---|---|
画 像 | 画像出典:Amazon | 画像出典:Amazon | 画像出典:Amazon | 画像出典:Amazon |
メリット | 安価 | 安価 | 風、雨に効果的 | 風、雨、火の粉に強い |
デメリット | 風向きにより方向を変える必要がある | 風向きにより方向を変える必要がある | 大きいので風の抵抗を受けやすい | ほかの煙突トップと比べて高価 |
アウトドアで使う薪ストーブなら安価なL字やT字の煙突トップで十分です。
ただ、L字やT字の煙突トップは、風向きによっては口の向きを変える必要があります。煙突の先端は手が届きにくし、使用中の煙突は高温になっていますので、実際には途中で向きを変えることは難しいです。
なので、H型やP型の煙突トップがオススメです。
薪は常に2本以上ある状態にする
炉内に薪が2本以上ある状態にすると、薪同士がお互いの燃焼を助け合う「相乗効果」が得られます。
薪を燃やすためには熱が必要です。
薪が1本だと周りからの熱の供給がなくなり、次第に火が弱くなって消えてしまいます。
なので、常に薪が2本以上ある状態にして高温を保つことが大切です。
薪同士を密着させない
薪はなるべく隙間が空くように置くのが基本。
薪同士に隙間があることで、空気の通りが良くなり燃焼が安定します。
下の写真をご覧ください。
右の写真のように薪をクロスにくべると立体的になるので、薪同士の隙間ができます。
細薪・中薪を途中にも投入する
前提として、太い薪は燃えにくいです。
なので「太い薪に火がついたから大丈夫だろう」と安心しきっていると、火の勢いが弱まってきてしまうこともあります。
こんなときは、途中で細薪や中薪を投入して太薪の燃焼を手助けしてあげることが大切。
薪が細くなればなるほど燃えやすく火の勢いが強いので、火力が欲しい時にも使える技です。
細薪・中薪は焚き付け用だけではなく、火の維持や火力アップのために常に用意をしておきましょう。
もし途中で火が消えてしまった場合には
「火付けの途中に火が消えちゃった」「ちょっと目を離した隙に火が消えてた」なんてことはよくあります。
慌てなくても大丈夫!
一度、火がついていた状態から自然と鎮火した場合は、極細薪や細薪を投入してやればすぐに復活します。
もし煙ばかりが出て火がつかない場合は、ガストーチであぶってあげれば簡単に火がつきます。
ここで注意がひとつ。
火が消えたからといって紙を燃やすのはNGです。なぜなら、簡単に火がつく一方、灰が軽いため煙突から火の粉混じりの灰が飛び出す恐れがあるからです。
【まとめ】基本ポイントを押さえて薪ストーブを楽しもう!
この記事では、初心者でもカンタンにできる火のつけ方から火を安定させるコツまで徹底的に解説してきました。
- 乾いた薪を使う
- 焚き付けには極細の薪を使う
- 順番に薪の太さを変える
- ガストーチで燃焼の補助をする
- 火が安定するまで投入口は全開
5つの基本ポイントを押さえれば誰でもカンタンに火を扱えるようになり、薪ストーブを最小限の労力で最大限に楽しむことができます。
以下の記事で「煙の少ない薪ストーブ」を紹介しています。興味があれば読んでください。