現場監督の仕事ってね、自社に利益を残すのはもちろんだけど、下請けさんに儲けて帰ってもらうってのも一つの使命じゃないかなって思う。
だけどね、世の中にはいまだ「下請け泣かせ」の現場監督も存在するんだよね。
その人たちの思考って、自分が儲ければそれでいいとか、下請けさんのことなんてどうでもいいとかって思ってるんだよね。
ぼくも20年以上現場をやってきて、社内外のいろいろな現場監督を見てきたけど「わぁ~こいつクズだな」って思う現場監督の共通点がわかったんだよね。
それは「ケチ」であること。
いま思えば、この人いい人だなって感じる現場監督は、違う会社でも助けてくれたり気前が良かったりする。
だけど人間性が低いって感じる現場監督はケチなんだよね。
社会はおおよそギブ&テイクで成り立っていると思うんだけど、ケチな人ってテイク(奪うこと)ばかりを求めるだよね。
下請けさんとかに対しても、値下げは要求するけど「あとは知らん!」みたいな感じだし、「早くしろ!」だの「ちゃんとしろ!」だのと要求はすごい。
下請けさんや部下が買ってきたコーヒーは飲むけど、自分じゃ一切買ってこないとか。
だからケチな現場監督は嫌われるんだよね。
こんなことを言うと「下請けから嫌われても儲けるのが現場監督だろ!」って言われるかもしれないけど、結局、下請けさんから嫌われるってことは損してるってことと同じ。
10年、20年ぐらい前まではこれで成り立っていたかもしれないけど、今は時代が変わった。
こんなことを続けていたら、ケチな現場監督はそのうち退職してバイバイでいいかもしれないけど、残された部下後輩たちが困ることになるんだよね。
そこで今回この記事では、ケチでクズな現場監督がもたらす悪影響についてお話します。
ケチな現場監督がクズである特徴
20年以上現場監督をしてきてクズな現場監督を見たけど、これね、びっくりするぐらい共通点があった。
タイトル通りケチ
まずケチなのは間違いない。
あなたや下請けさんが買ってきた缶コーヒーは飲むんだけど、ジュース1本もおごってもらった記憶がないってことあるでしょ。
プライドは高いけど、こういったところに「プライドはないんかい!」って突っ込みたい。
あと、人のお金で飲むのが好きみたい。
下請けの社長さんとかと、接待でしょっちゅう飲みに行ってたりする。
とりあえず自分の財布を出すところは見たことがない。ってか、その人の財布自体を見たことがない。
下請けさんが持ってくる見積書でも、安さが一番!ってな感じでとりあえず値切らす。追加工事があったり、条件変更があったりしても「最初からわかりきったことだろ、当初見積もりの範囲内だよ」「そんなもんサービスでしろよ」なんて平気で言う。
貰うもんはもらっても、払うほうは払いたくない。これが大前提にある。
5時から男
「5時から男」って1988年に流行語大賞を受賞した言葉。
その当時は、仕事中はダラダラ、終業時間(17時)になるとイキイキして元気に遊びまわるサラリーマンって意味で使われていたみたい。
ここで言う5時から男はちょっと違う。
仕事中はダラダラとしているのは同じだけど、5時になるとスイッチが入って残業の鬼になる。
残業の鬼になるって言っても、仕事をしている様子はあまりない。
夕方になるとね、下請けの職人さんに「今日はここまでして帰れ」「ちょっとは残業しろ」なんて言うもんだから、職人さんのイライラが伝わってくる。
帰り支度をしていた職人さんはしぶしぶ暗くなるまで残業するはめに。一緒に残っている他の元請職員も終わりの見えない残業に「今日は何時に帰れるだろうか・・・」と疲弊する。
日中は姿をくらましてどこにいるかもわかんない。事務所にいてもなにしてるかもわかんない。なのに毎日19時、20時までの残業は当たり前。
工事完成1か月前ぐらいになると、確実に日付変更線を越える。休日もない。
まあ、残業代で稼いでるのは見え見えなんだけどね。
今わね、働き方改革とかワークライフバランスとかって言って残業はかなり減ったけど、その名残りはある。
定時を過ぎてからの打ち合わせとか、ネットサーフィンとか、何がなくても1~2時間は事務所にいたりする。
休日出勤も好きみたい。わざわざ休日に工程を入れたりする。
何しているかわからない
どこにいるのかわからない。居ても何してるのかわからない。
とりあえず仕事をしている様子はない。みんなが「あの人なにしてんの?」って噂をされるぐらい何しているかわからない。
消息筋に聞いたところ「パチンコ」「競馬」「打ちっぱなし」だそう。ちなみに事務所にいるときは「エ○サイト」「ゲーム」だとさ。
現場にもほとんど出ないから、長靴・カッパは新品そのもの。「作業服が汚いヤツは仕事のできないヤツ」ってよく言う。
あ~ごめん。ぼく、いつもドロドロだったわ。
確かに、日中、パチンコや競馬にいそしんで、事務所でエ○サイトやゲームをしてるだけで現場が進むんだもんね。服も汚れないし、そりゃ優秀だ。
人の気持ちがわからない
朝から「なんで言ったことができてないんだ!」って怒鳴り散らす人もいた。物を投げつける人もいた。
ぼくも実際に石を投げられたり、ヘルメットの上から金づちで叩かれたこともある。
ちょっとしたことや、思い通りに人が動かないと、すぐにキレる。
とにかくいつも機嫌がわるい。
口を開けば、職人さんや部下をバカにしたことを言ったり、イヤミなことを平気で言ったりする。
人の気分をわるくする天才。
こんな現場監督のもとで働いてる下請けさんや部下たちは、ノイローゼになったり抑うつ状態になる。
仕事だからみんな我慢しているけど、当の本人は気にする様子なんかない。
ぼくは比較的温厚な性格なんだけど、一回だけマジで「ぶっ○してやる」って○意を覚えたことがある。今でもあの時の記憶が鮮明に蘇る。
今はね、ハラスメントがどうのこうのってあるから、ここまでひどい人は減ったように見えるけど、実際、歳を取ってもその人間の本質って変わらないんだよね。
地元の業界に悪名を轟かせた「クズ代表だった現場監督」に数年ぶりに出会った。
この人、人の死まで笑った。ほんとクズはどこまでいってもクズなんだなと。
現場監督は偉いと思っている
これね、現場監督に限った話じゃないけど、職業や役職で威張る人ってクズ率が高いのは確かなんだよね。
だって基本的なことがわかってないんだもん。
職業や役職って、社会や組織の中で割り当てられた役割に過ぎないし、自分は偉いって思っている人だけで社会や組織は回せないでしょ。
現場監督もただの役割のひとつでしかない。
現場監督だけいたって現場進まないじゃん。実際にスコップ持ったり、機械に乗ったり、重たい物を運んだりしてくれる職人さんがいるから工事は完成する。材料を入れてくれる業者さんにしてもそう。
現場監督は偉いって勘違いしているから、職人さんや部下たちに横柄な態度をとったり、バカにした言動をしたりする。
トラブルが起きれば職人さんや部下たちのせいにするし、手柄は独り占めだもんね。
かと思えば、上の職業や役職の人に対しては恐ろしく腰が低かったりするから笑っちゃうんだけどね。
クズの悪影響は計り知れない
ぜひ、現場監督や上に立つ人に読んでほしい一冊がある。
<「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である>
この本はクズな人にこそ読んでほしいんだけど、クズな人に限って読まないんだろうな。
簡単に要約すると、クズがひとりいるだけで周囲の人間はおろか、会社全体にも悪影響を及ぼす、というもの。
それでは、クズな現場監督がいると現場や会社にどんな悪影響があるかを見ていこう。
お金をケチると何倍もの損失になる
ケチな現場監督は「利益第一主義」から抜け出せない。
だから、下請けさんの持ってきた見積書でも値切ろう値切ろうとするし、追加工事も「サービスだろ」なんて言っちゃう。
「千円単位の端数を切ってね」ぐらいならかわいいものだけど、1万円単位、10万円単位も切らそうとする。
その時は儲かった気分になるかもしれないけど、実は目に見えないところで何倍もの損失を生むことになっているなんて気が付いてない。
下請けさんも人間だからね、値切られて利益の少ない現場は「ヒマなときにしよう」「手が空いたら行こう」と「片手間仕事」にされ後回し。
早くしてもらえればどんどん工程は回っていって早く終わらすことができるのに、下請けさんが入ってこないからどんどん経費だけが喰われていく羽目になる。
それに次回からは、前回の利益分にプラスして値切られる分も見越して「高い見積書」が出てくるようになる。普通なら下請けさんの好意で「サービスでしてあげるよ」っていうようなことも、「契約外だからできません」とか「別途、費用がかかります」とか言われるようになる。
結局、値切った金額の何倍もの損失になる。
下請けさん離れが進む
お金のこともそうだけど、心無い言葉を浴びせる人がいる現場なんかには行きたくないですよね。
だって、職人である前に人間だもの。
朝から怒鳴られたり、ネチネチと嫌味を言われたり、残業休日出勤を平気でさせられたり。
「あ~もうこいつの現場は二度としねえ!」ってなるのは当たり前。
しかし、まだ「こいつの現場」ならマシですが、「こいつのいる会社」ってなってしまったらどうでしょう。
元請けの会社って現場管理だけで、実際に作業するのは下請けさんがほとんど。
このクズがいるおかげで、下請けさんがどんどん離れていってしまったら、どの現場が立ち行かなくなります。会社としてもほんと大きな問題だよね。
一度、下請けさんが離れていってしまうと、その影響は10年、20年と続いていっちゃう。
特に専門業種の下請けさんならなおさら痛い。
例えば特殊な工事とかの場合、専門の下請けさんが来てくれなかったら、材料や機械の手配に手間取るし、慣れない下請けさんと四苦八苦しながらの施工や管理で時間もお金もかかってしまい、100万円で済むところが150万円も200万円もかかることになる。
人手不足の昨今、下請けさんの確保に苦労しているところもある。でもほんとうに人手が足らないだけなの?
10年前、20年前の「代わりはいくらでもいる」のクズ的な考え方が、あなたの会社の人手不足を生み出した原因となっているんじゃないかな。
そりゃ下請けさんも同じ金額の仕事をするなら、クズのいる会社より大切にしてくれる会社のほうがいいもんね。
クズは周りの能力を下げる
<「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である>の中から研究データを紹介する。
クズな人がいる職場では
- 48%の人が、仕事にかける労力を意図的に減らしている。
- 47%の人が、仕事にかける時間を意図的に減らしている。
- 38%の人が、仕事の質を意図的に下げている。
- 80%の人が、無礼な態度を気に病んでしまい、そのせいで仕事に使うべき時間を奪われている。
- 63%の人が、無礼な態度を取る人を避けるために、仕事に使う時間を奪われている。
- 66%の人が、自分の業績は低下していると答えている。
- 78%の人が、組織への忠誠心が低下したと答えている。
- 12%の人が、他人の無礼な態度が原因で転職をした経験があると答えている。
- 25%の人が、無礼な人にストレスを感じたせいで顧客への対応が悪くなることがあると答えている。
まあ、この研究結果、納得ですね。
例えば、重箱の隅をつつく人だったり、することなすことに批判的な人がいれば、やる気がなくなるのはもちろんだけど、仕事がどうのこうのよりも「この人に言われないためにはどうするか」ばっかりになってしまって本質からズレてしまう。
怒鳴られでもすれば、萎縮しちゃって仕事も手につかないし、本来の能力なんて発揮できないのは当然のこと。
中には耐え切れずに辞めていってしまう人もいる。
目に見ることができないだけにわかりにくいけど、会社に与えている損害は相当大きなものだと言える。
クズはウイルスのように感染する
現場監督が人の気持ちを考えられないクズだった場合、その影響は直接関わった人だけではなく現場全体に広がる。
例えば、下請けの職長さんが怒鳴られたら、それを見ていたほかの人たちも気分が悪くなる。
怒鳴られた本人も見ていた周りの人も、ストレスが溜まり攻撃的になる。それが連鎖的に周囲に広がっていくのだ。
もうこうなると、現場の雰囲気は最悪。
元請けと下請けさんの仲も悪くなるし、職人さん同士でも対立が始まったり、現場に来なくなる人も出てくる。
そんな現場にはだれも近づかなくなり、孤立状態。
「ここ、なんだか嫌なんだよね」「なんか雰囲気悪いから行きたくないんだよね」って場所ありませんか?
イヤな思いをさせられた現場だったり、その現場監督がいた部屋なんかの近くを通りかかると気分が悪くなる。
トラウマレベルって言うか、ひどい後遺症が何年も何十年も会社や部下や後輩、職人さんに残るし、まったく知らない第三者にもその雰囲気が伝わる。
このクズウイルス、発生源がいなくなってもその空間に漂い続けるんだよね。
クズひとりの影響力は相当なものだと言える。
頭のアップデートができない
ケチな現場監督は、ヒト・モノ・コトに投資する考えがない。
若い現場監督、もしくは現場監督見習いが、新しい技術だったり、時代の流れを汲んだ物事にお金を使おうと思っても「そんなもん、なんの意味があるの?」なんて言って取り入れようとはしない。
これって、昔の成功体験だったり、古い価値観をそのまま引きずっている、すなわち「頭のアップデート」ができていない証拠。
ひと昔前までは、下請けさんや材料屋さんに払うお金をケチって利益を残す、無理な工程でも職人さんや部下たちのケツを叩いて経費を抑える、これができる現場監督が稼ぎ頭で優秀ってされてきた。
だから、過去の栄光にとらわれて「守銭奴」そのままの体質で、ケチって1万円を抱え込むことばかり考えて、新しいヒトやモノ、コトにお金を使わないんだよね。
他社は5年も10年も前から取り入れている技術も、昔のやり方にこだわるあまりに気が付いたら時代遅れ。
今さら焦ってやろうとしても、やっぱりケチが先に来るから中途半端。どんどん技術は進歩していって、どんどん置いて行かれる。
そうして、会社全体の技術力も仕事量も右肩下がりの状態になる。
人間性重視の時代へ
今までは縦社会で「上の人の言うことは絶対」みたいな感じで、人間性よりも職業や役職が重要視されてきた。
下請けさんも仕事がないと困るし、部下や後輩たちもこれ以上雰囲気が悪くなるのはイヤだから、黙って従ってきたと思う。
クズの現場監督の上司だったり、役員たちも「見て見ぬふり」の「ことなかれ主義」だったりする。
でもやっぱり、クズな人を見過ごすわけにはいかなくなってきているんじゃないかな。
いま、世界の有名企業は「利益重視」から「人間性重視」にシフトチェンジし始めた。
これは、クズ人間をほったらかしにして利益をだそうとしても、クズ人間が出す見えない損害のほうが大きいからだ。
他者から奪っても得る利益は小さい。逆にお互いの利益を尊重できる「win win」の関係性のほうが、より多くの利益を生み出すことができて、お互いが気持ちよく、そして幸せになれることに気が付いた。
だから、周りに悪影響のあるクズ人間を隔離して更生プログラムを受けさせたり、いよいよ変わる意思がないものは排除する動きになっている。
企業面接でも、学歴や能力よりも「人間性」を重視するようになっている。
ひとつの現場を取りまとめる現場監督も、上からパワーで抑えつける人間より、手をつないで同じ方向が見る人間が大切だってこと。
「奪うよりも与える人間であれ」
これが現場をうまく回すヒントじゃないかな。
興味があったら読んでみて。
<「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である>