現場監督の「休み」に対する考え方は大きく2つに分かれます。
- ちゃんと土日は休んで自分の時間を満喫したい
- 休んでもすることがないし、仕事でもかまわない
私の考え方は間違いなく前者ですが、意外にも後者の考え方を持った現場監督が多いのも事実。
また会社の中でどちらの考え方が優先されるかと言うと、これまた「後者」であることも事実。
時代の流れで、建設会社も土日休みの完全週休2日のカレンダーになっているところも多いですが、実際の現場は休日出勤ありきで動いている場合がほとんど。
建設現場に完全週休2日が定着しないのは、もちろん会社や現場監督本人の考え方もありますが、建設業を取り巻く背景にも原因があります。
今回この記事では、働き方改革が叫ばれる今、なぜ現場監督の完全週休2日が実現しないのか、実現させるためにはどうしたらよいかなどお話していきます。
完全週休2日が定着しない原因とは?
完全週休2日が定着しない理由は山ほどありますが、ここでは代表格の5つの原因をご紹介します。
- 現場のトップが休日出勤ありきで工程を組む
- 会社の考え方が定着しない
- 協力会社(下請)が週休2日に対応していない
- 天候に左右される
- 公共工事の発注者(国、都道府県など)の工期設定がデタラメ
この5つの原因は密接に関係しており、全てを解決しないと建設現場の完全週休2日は定着しません。
ではそれぞれの原因を深堀りして見ていきましょう。
現場のトップが休日出勤ありきで工程を組む
現場監督が休日出勤ありきで工程を組むパターンには2通りあります。
パターン①:現場のトップの個人的な理由
現場のトップである現場監督が、「休みは日曜日だけでいい」と言う考え方をしているパターンです。
- 休んでもすることがない
- 家にいるより仕事しているほうが楽
- 休日出勤で稼ぎたい
- 「頑張っている」アピールをしたい
など、個人的な理由で効率性や生産性に関係なく休日に作業を入れます。
このような現場監督の場合、いっしょに現場を運営している同僚や後輩たちも巻き添えにすることが多いので、いっしょに現場をしている人たちはいい迷惑です。
そもそも休む気が無いので、完全週休2日なんて実現しません。
パターン②:工期に余裕がない、少しでも進めたい
このパターンは、工期に余裕がないことに加えて、現場監督の責任感や不安感によるところが大きいです。
- 工事が間に合うか心配
- 後で突貫工事になるのは避けたい
- 工程に余裕を持たせておきたい
工程管理をしていると、工期内に工事を完了することができるか不安になったり、終盤に間に合わなくて大慌てすることを避けたいという心理状態になります。
なので少しでも工事の進捗を早めるために、休日も含めて工程を組んでしまいます。
しかしこのパターンの場合、完成の見通しが立っても緩むことがなく、結局工事完成まで突っ走っていきます。
一つ現場が終わってもすぐに次の現場が待っていますので、このスパイラルから抜け出すのは困難です。
会社の考え方がおかしい
そもそも論として、会社は「休んで欲しくない」と思っています。
なぜなら現場監督はサラリーマン、同じ給料を払うなら休ませるより働かせたほうが生産性が上がり、利益が確保できるからです。
逆の言い方をすれば「休ませるだけ損」という考え方です。
会社は利益のために長時間働かせて生産性を上げようとするけど、効率性には目を向けず休ませることは考えていません。
なので「雨が降ったら休めばいいから、土日も出て進めろ」なんて平気で言います。
理屈はわかります。
ですが実際に雨が降っても、雨降りにできる作業があったり、現場が休工になっても現場監督には書類などの事務作業もあったり、平日に休んでも電話がかかってきたりでなかなか休めないのが現状です。
会社の考え方が「休日は休め」とならない限り、完全週休2日は難しいでしょう。
協力会社(下請)が週休2日に対応していない
「今度の土日は休めるかも」と思ったていた矢先、下請会社の職長さんから「今度の土曜に作業しても大丈夫ですか?」なんてことはよくある話ですよね。
下請会社の協力なしでは現場が回らないことは確かで、「無理を言わないといけないときもあるし、無下にはできないよね」ということで休日出勤が確定してしまいます。
下請けがメインで職人さんを抱えている会社は、休みは日曜日だけのところが多く、祝祭日や土曜日は当たり前に仕事です。
なので現場監督も、祝祭日や土曜日は休めないことがほとんどです。
また日給の職人さんが多いのも事実で、完全週休2日になると給料が何万円も減ってしまい、生活が立ち行かなくなることも。
職人さんがいなくては現場が回らない。
なので現場監督は、下請けの職人さんの生活のことまでも頭に入れておく必要があり、なかなか強気に「休みの日はダメ!」なんて言えないのです。
天候に左右される
冬の積雪や梅雨、台風のシーズンなどでは、安全面や品質面から現場を休工にする必要があります。
ですが悪天候で休工になっても、余程のことがない限り工期は伸びません。
ではこの休工になった分、どこで回復させるかと言うと「休日出勤」と「残業」しかありません。
人を増やしたり重機を増やしたりすれば工程を縮めていくことは可能ですが、なにせ建設業界も人手不足、しかも施工体制だの資格だのと制約が厳しく、すぐすぐに増員なんてできません。
なので悪天候や異常気象が増えれば増えるほど、現場監督の休日は削られていくのです。
発注者(国、都道府県)の工期設定がデタラメ
公共工事の現場説明書や特記仕様書では、あたかも「適正な工期を算出しています」みたいなことが記載されていますが、まったくのデタラメです。
今、発注されている公共工事のほとんどは
- 他の工事が終わるまで工事にかかれない
- 土地の買収が済んでいない
- 地元との調整ができていない
- 土砂などの搬出先が決まっていない
- そもそも設計すらできていない
こんなことは当たり前です。
そして自分たちのずぼらな発注は棚に上げて「早く終わらせてもらわないと困る」「工期を短縮する努力はしているの?」なんて言うものだからイヤになります。
しかし現場監督は点数を付けられる立場、下手に言い返して目を付けられるよりも、「休日出勤もして、なんとか間に合わせます」と言ったほうが印象も良く無難であることは間違いなしです。
だから休日出勤は無くならず、完全週休2日は夢のまた夢なのです。
発注者からしてみれば、現場の人間の休みなんかどうでもよくて、自分たちのボロを現場が補ってくれたらそれでいいのです。
現場の完全週休2日を実現させるためには
今まで原因を見てきましたが、要はその組織であったりグループであったりのトップに立つ人間の意識の薄さです。
力を持つ人の意識改革が必要
力を持つ人とは、会社なら社長や役員や管理職、発注者なら所長や課長クラス、そして現場なら現場監督です。
それぞれのトップや責任者が「完全週休2日」にどれぐらい意識を向けるかで、目先の利益、責任転嫁の短絡的思考から建設業の効率化や生産性の向上に視点がシフトして、長期的な安定に繋がると思います。
しかし結局は人間。
建設業の担い手不足が深刻化すると分かっていても、休みが少なくて離職率が高いと分かっていても、「自分には関係がない」と思うどころか、「何も考えたことがない」と言った方が正解でしょう。
いくら「完全週休2日」を始めとする働き方改革が大切だと推進したところで、今が大切な「逃げ切り思考」の人たちには響きません。
しかもこの逃げ切り思考の人たちって50代、60代がほとんどで、「上の立場」になっていることが多く、今まで休みなく働いてきた人たちなんです。
だから「完全週休2日」に対して意識が薄く、重要視していません。
なので完全週休2日を実現させる、定着させるには、力を持つ人の意識改革が必要なんです。
自分たちの覚悟が必要
完全週休2日を定着させるためには、「力を持つ人の意識改革」が重要だとお話しました。
しかし待っているだけでは何も始まりません。
休みたければ自分たちが覚悟を決めて、行動に移すことも大切なのです。
力を持つ人の意識改革が必要なのは確かですが、人の考え方を変えることは不可能に近いです。
なのでいくら「意識低い系」の人に、完全週休2日の大切さを説いたところで、その人の意識が極端に変化することはありません。
ですが自分を変えることはできます。
具体的には、「会社の休日は絶対休めるように工程を組む」「会社にも発注者にも、そして下請けにも完全週休2日を告知する」などです。
覚悟が必要なのは、あなたが完全週休2日を実現することで、必ず文句を言ってくる人がいること。
今まで通りのやり方でただ休むだけでは説得力に欠けます。
だから文句を言わせないためにも、「効率性と生産性の向上」を図る必要があるのです。
工程を綿密に組み、ムダを省き、週6日の仕事を5日でこなせるようになれば、誰からも文句を言われる筋合いはなくなります。
まとめ
現場に完全週休2日が定着しないのは、関係するそれぞれの思惑の違いであったり、意識の薄さです。
何のために仕事をしているか考えたとき、自分の生活のためだと思うのです。
「でも、あれ?生活のための仕事が、仕事のための生活になってない?」
もちろん仕事は大切ですが、でも仕事だけで人生が終わるのって悲しくないですか?
と言うわけで、完全週休2日を実現できるように覚悟を決めましょう。
<人生を楽しむためにも自分時間は大切です>